なにか悲しくなった時や辛くなった時に、お気に入りの映画に慰められたことは誰にもありますよね。映画療法がポジティブな感情や楽観性を高める、ということが科学的にも実証されているのです。

「物語」は太古の昔から人々の生活に存在し、大きな影響力を持っていました。「物語」は孤独を和らげ、気分を高揚させ、社会的なつながりを生み出す素晴らしいツールであり、優れたエンターテイメントだったのです。

映画は、日々の悩みや不安から一時的に解放されるための、健全な逃避方法のひとつです。実際、映画制作やデジタルストーリーテリングは、トラウマや虐待に苦しむ人々のセラピー療法にも利用されています。

しかし、数多くのプラットフォームにある膨大な数の作品の中から、視聴する作品一つを選ぶのはとても大変ですよね。ビデオオンデマンドのおかげで、自宅で好きな映画が見られるようになった今でも、映画鑑賞は、依然として、社会的な活動として生き残っています。

ホームシアター体験

映画館に行き、映画を見る喜びを他の人と分かち合うのは素晴らしい体験です。悲鳴や笑い声が飛びかうグループの一体感や、覗き見を公認されているという感覚は、他では得られないものでしょう。

想定外のパンデミックと、それに続く世界的なロックダウンにより、映画ビジネスは大きく変化しました。映画制作は全て中止され、劇場も全て閉鎖されました。映画のプレミア上映は延期されるか、または『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの誕生』や『炎の女の肖像』、チリ映画『Ema』のように、予定より早くオンデマンドストリーミングプラットフォームにて公開配信されました。

映画祭もまったく同様で、5月20日~6月7日までYouTube配信が行われた世界的な映画祭「We Are One」のように、全く新しい形式も誕生しました。このバーチャル映画祭では、カンヌ、サンダンス、トロント、ベルリン、ヴェネチアといった世界で最も権威ある映画祭の上映作品の中から、長編、短編、ドキュメンタリー、音楽、コメディ、パネルディスカッションなどが放映されました。

また、「Curzonホームシネマ」がライブストリーミング・イベントシリーズを開始したため、オスカーなどの賞に関する規定も、現状に合うよう調整されました。

新しい撮影基準や保険など、業界のルールは一団と厳しくなりました。このような厳しい状況におかれている映画業界を支援するべく、BFIフィルムやテレビ緊急基金といった複数の慈善団体や取り組みが設立されています。

ドライブイン・シネマ

映画館なき後の映画産業の未来については、様々な憶測が飛び交っています。撮影チーム全体が孤立し、ビジュアルエフェクトや動画への依存度が高まっており、完全バーチャル制作も行われるなど、バーチャル制作は大きく進歩しています。

バーチャル制作なら、現場で物理的世界とデジタル世界を融合させたシークエンスを作り出せ、変更や調整もリアルタイムで行うことが可能です。

7月2日~9月27日まで、ロンドン、マンチェスター、グラスゴーなど12会場で開催されるドライブインの映画祭「TheDriveIn festival」は、この夏のハイライトともいえるイベント。1980年代のクラシック映画や大ヒット映画が上映されるほか、スタンダップコメディ、ビンゴ、サイレントカーディスコなど、さまざまなエンターテインメントが用意されています。